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長野家庭裁判所 平成3年(家)592号 審判 1992年11月06日

相手方(以下「申立人」という。) 八木たみ

平3(家)592号事件及び 平4(家)585号事件相手方兼 平4(家)542号事件

申立人(以下「相手方」という。) 八木広子

主文

1  申立人の寄与分を800万円と定める。

2  相手方の寄与分を定める申立を却下する。

3  被相続人の遺産を次のとおり分割する。

(1)  申立人は、別紙遺産目録1(1)、(2)記載の各土地及び(3)、(4)記載の各建物、同目録2(1)<2>記載の株式のうち16,000株、同目録2(3)<2>ないし<4>及び<8>記載の投資信託合計700口、同目録5記載の貸付金、同目録9記載の庭園部分を取得する。

(2)  相手方は、申立人に対し、前項の16,000株の株式に相当する株券を引き渡せ。

(3)  相手方は、別紙遺産目録2(1)<2>記載の株式の内14,000株、<1>、<3>ないし<7>記載の各株式、(2)記載の社債、(3)<5>及び<6>記載の投資信託合計300口並びに<11>記載の投資信託、同目録4記載の現金、同目録6記載の電話加入権、同目録7記載の車両、同目録8記載の家財一式並びに同目録10記載の代償請求権を取得する。

4  本件手続費用は、それぞれ支出した当事者の負担とする。

理由

一件記録による当裁判所の事実認定及び法律判断は、次のとおりである。

1  相続の開始、相続人及び法定相続分

被相続人は、平成元年3月18日死亡し、相続が開始した。

相続人は、被相続人の母である申立人八木たみと被相続人の妻である

相手方八木広子であり、その法定相続分は、申立人が3分の1、相手方が3分の2である。

2  遺産の範囲

(1)  申立人は別紙遺産目録1記載の各土地建物の持ち分2分の1が被、相続人の遺産に属する旨主張し、相手方は、そのうち(2)及び(4)記載の土地建物(以下「係争土地」「係争建物」という。)は、元々被相続人がその所有権を取得したものであって、名義上単に被相続人の父八木忠和(明治38年10月15日生)(昭和62年5月21日死亡)(以下「忠和」という。)名義となっているに過ぎず、同人が所有していたものではないと争っている。

そこで検討するに、申立人及び相手方の各審問の結果、家庭裁判所調査官○○○○作成の調査報告書(続)並びに上記(2)記載の土地登記簿謄本によると、係争土地は昭和43年1月22日忠和が売買によって取得したとして、同年2月13日その旨所有権移転登記がなされていること、忠和の死亡により、被相続人と申立人が結局持分各2分の1でそれぞれ相続したことから、係争土地並びに上記(1)及び(2)記載の土地建物について、同年8月27日相続を原因とするその旨の所有権移転登記手続がなされていること、係争土地の購入代金はおよそ52万円であったこと、忠和は、昭和34年国鉄を退職したが、その後も昭和50年ころまで○○○○○に勤めたり県庁の工事現場の守衛をするなどして働いて収入があった他に、昭和38年ころからは後記認定のとおりの年金収入もあったこと、係争建物は、昭和42年ころ古材を利用して建てられたもので、内装や天井の一部がないような簡易な造りの建物であることが認められる。

以上の事実によると、忠和は係争土地を購入した当時すでに国鉄を退職していたが、就職もし定期的な収入を得ていたこと(ただし、婚姻当時から、忠和が家計一切を管理していたため、生存中の収支状況は全く不明である。)、忠和の遺産分割に際しては、係争土地建物が忠和の所有であったことについて、申立人と被相続人らとの間で争われた様子は全く窺えず、相続が開始してからほぼ3ヵ月後には係争土地についてもその旨の所有権移転登記が経由されていることが認められるので、係争土地の購入資金及び係争建物の建築費については、被相続人からある程度の資金援助がなされた可能性は否定できないものの、それ以上に被相続人がその所有権を取得したことを認めることはできない。すなわち、係争土地建物は忠和の所有であったものと認められる。その結果、忠和の死亡によりその相続人である申立人と被相続人が結局持分各2分の1として相続したことになり、したがって、係争土地建物については共有持分2分の1のみが被相続人の遺産に属するものというべきである。

なお、同目録1(1)及び(3)記載の土地建物が本件遺産であることについては当事者間に争いがなく、本件記録からもこれを認めることができる。

(2)  次に、同目録2(1)記載の各株式の存在自体については当事者間に争いはなく、申立人はこの他に○○○銀行の株式110株も遺産であると主張しているが、相手方は、上記<3>記載の○○○○の株式2,205株の内160分の100及び○○○銀行の全株式は、相手方がその給与で購入し相手方が所有するものであって、いずれも被相続人の遺産ではないと主張し争っている。上記以外の各株式が遺産であることは当事者間に争いがなく、かつ本件記録からもこれを認めることができ、また相続開始時点の各価格が同目録の相続開始時点価格欄記載のとおりであることが認められる。

そこで検討するに、相手方に対する審問の結果及び本件記録によると、被相続人名義で、昭和60年12月7日○○○銀行の株式2000株が97万円で、昭和61年9月10日○○○○の株式2000株が1,618,800円でそれぞれ購入されていること、また、被相続人名義で、昭和61年9月には別途○○電気工業の株式合計12,000株が合計25,479,375円で購入されていること、○○○○及び○○電気工業の上記購入代金は、当時保有していた○○建設の株式2万株や○○化学の株式2万株などを売却した代金に現金140,255円及び小切手120万円を加えて支払われていること、○○○銀行の上記2,000株の株式については、昭和62年11月13日全株式が売却され、売却代金は全額が中期国債ファンドの購入資金に充当されていること、相手方が○○証券株式会社に対し、遺産相続のために提出した平成元年3月18日現在における「有価証券等預り証明願」(甲5号証)には、「○○○○2,000株」の記載がなされているが、「○○○銀行」の株式についての記載はないことが認められる。

以上の事実によれば、上記○○○○の株式については、相手方がその代金の一部として100万円を支払い自ら購入したとの事実は認めることができず、かえって、被相続人が全額その代金を用意して取得したものと認められ、2,205株(なお、205株の取得経過については必ずしも明かではないが、この部分に関する争いは当事者間になく、本件記録からもこれを含めた全株式が遺産であると認められる。)全株式が本件遺産分割の対象となると解する。しかし、○○○銀行の株式については、被相続人が生存中に購入した2,000株は生存中に売却されていることから、申立人が主張する株式110株は、別途相手方が購入した(相手方は、結婚後もほぼ継続して仕事をしており、固有の収入を得ていたことが認められる。)ものと認めるのが相当で、本件遺産とはならないと解する。

(3)  次に、同目録2(2)記載の社債については、当事者間に争いがなく、本件記録によってもこれを認めることができる。

(4)  同目録2(3)<1>ないし<10>記載の各投資信託が、遺産であることは当事者間に争いがなく、本件記録からもこれを認めることができる。

ところで、相手方は、<1>及び<7>記載の新大型株式債権ファンドなど250口はその後解約し、内60万円は国債公社債となっている、<9>及び<10>記載の公社債投信など合計616,154円は解約され内50万円は相手方名義の割引興業債権の購入代金に充てられたが、115,000円余りは費消した、更に、<11>記載の中期国債ファンド12,008,254円の内約400万円は、相手方が被相続人から生前に贈与としてもらったものであり遺産ではなく、また、内およそ600万円は、労金及び郵便局のMMCに各100万円あて貯金し、ファンドファジイ8910を110口、ボンドミックス89-03を100口及びニューフロンテア8907株式を100口それぞれ購入し、更に、○○紡績の転換社債第1回を100万円で購入したため、200万円ほどが残っているだけであると主張している。

そこで検討すると、本件記録によれば、<1>、<7>、<9>及び<10>記載の新大型株式ファンドなどは相手方において解約され、その代金の一部で相手方名義の割引興業債権及び公社債投信が購入されたり相手方において費消されたりしていること、<11>記載の中期国債ファンドの内3,936,544円相当分は、平成元年2月10日及び同年3月9日ころ解約され、その売却代金をもって相手方名義で○○商事の転換社債などが購入されていること、相手方は、上記国債ファンドの内約600万円相当を解約して郵便局、労金のMMCに各100万円づつ貯金した他、ファンドファジイなど合計310口を購入し、現在の中期国債ファンドの残高は2,365,804円であることが認められ、同残高が本件遺産分割の対象となる。

ところで、相続開始後に相続人の一人が他の共同相続人に無断で遺産の一部を売却したり費消したりしたときは、当該遺産は本来は遺産の範囲から逸出して遺産分割の対象とはなりえず、代わりに他の共同相続人の当該処分を行った相続人に対する損害賠償請求権あるいは不当利得返還請求権がいわゆる代償財産として分割の対象になるものと解される(その場合、その額は原則として訴訟手続によって確定される。)が、審判手続の段階においても、そうした損害額あるいは不当利得額が明らかである場合には、訴訟手続を経ることなく直ちに遺産分割の対象とすることができるものと解するのが相当である。そこで本件の場合を検討するに、公社債投信などが解約されたときは、遺産が売却された場合と同様、それ自体は本来は遺産の範囲から逸出して損害賠償請求権などに代わるものの、相続開始時点におけるその残高は本件記録上明らかであるので、少なくともその額の損害あるいは不当利得が発生しており、しかも他の共同相続人がその額をもって遺産分割の対象としていることからすると、相続開始時点における上記残高をもって遺産分割の対象とすることができるものと解するのが相当である。すなわち、解約されたりして遺産の範囲から逸出した上記新大型株式債権ファンドなどの代わりに、申立人の相手方に対する損害賠償請求権など合計8,840,433円が遺産の範囲に入ることとなる。

(5)  同目録3記載の各預貯金については、被相続人の死亡当時それらが存在したことは当事者間に争いがなく、本件記録からもこれを認めることができるが、これを遺産分割の対象に含めることにつき、両当事者の明確な合意は得られていない。

しかし、相手方は、本件審判手続において、預貯金などが遺産分割の対象となることを前提にして、各相続人の具体的相続分を算定するなどしているので、本件においては、当事者間において遺産分割の対象とすることの黙示の合意がなされたものと認められ、したがって、上記預貯金はすべて遺産分割の対象になると解される。

ところで、本件記録によると、上記預貯金は、被相続人の死亡後相手方において解約されたりして払い戻しを受けていることが認められるので、結局上記預貯金自体は遺産分割の対象とはなりえないが、前記(4)で述べたとおり、申立人の相手方に対する損害賠償請求権などがいわゆる代償財産として分割の対象になると解され、本件においても、相続開始時点における残高が合計3,190,547円であることは本件記録上明らかであるから、少なくともその額の損害あるいは不当利得が発生したとして、同金額をもって遺産分割の対象とするのが相当である。

(6)  同目録4記載の現金については、相手方は20万円があるだけと主張して争っており、本件記録によっても相続開始時点においては上記金額以上の現金があったとは認められないので、20万円が遺産分割の対象財産となる。

(7)  同目録5記載の貸付金が被相続人の遺産であることは当事者間において争いがなく、本件記録によってもこれを認めることができる。相手方は、この他にも八木昭夫に対する100万円の、大滝弘治に対する50万円の各貸付金も遺産として存在していると主張し、申立人はそれを争っているところ、本件記録によってもいまだその存在を認めることはできないので、遺産とはなりえない。

(8)  同目録6記載の電話加入権、同目録7記載の車両、同目録8記載の家財一式及び同目録9記載の庭園一式が被相続人の遺産であることは、当事者間において争いがなく本件記録によってもこれを認めることができる。

(9)  申立人は、特別受益目録3記載の未収金について、本件遺産である旨主張し、相手方は、いずれも受取人は相手方とされているのであるから被相続人の遺産ではないと主張して争っているところ、本件記録によると、本件未収金はいずれも入院給付金あるいは入院保険金などといった性質のもので、その受取人は約款などですべて相手方とされていることが認められる。そうすると、この未収金については相手方固有の権利となるものであり、したがって本件遺産分割の対象とはならないが、その実質は後記保険金と同様のものであることから、保険金と同じように、相続人間の衡平な遺産分割といった点から、特別受益とみなすのが相当であると解する。

(10)  申立人は、上記以外に、建物共済金439,000円及び株式配当金666,973円も本件遺産の範囲に含まれる旨主張し、相手方は共済金については保険金ではなく遺産とは関係ないと主張し争っているところ、本件記録によると、この共済金は建物に対する保険金としての性質を有するものであって、相続開始時点においてもまた分割時点においてもいまだ具体的請求権とはなっていないので、遺産分割の対象となる財産とは認められないと解するのが相当である。また、株式配当金についても、いずれも本件相続が開始した後に発生したものであることが認められるので、当事者の遺産に含める旨の合意がない限り、遺産分割の対象とすることは相当でないと解される。

3  寄与分

忠和及び被相続人の生存中の生活費に関する収支状況について検討するに、忠和の昭和56年4月からの年金が年額1,962,500円(月額163,541円:1円未満切り捨て、以下同じ)であり、これに対し被相続人の昭和54年1月から同年12月までの1年間の賞与を含めた給与総額は3,846,043円(月額320,503円)と認められるから、これを前提に全国の消費者物価指数に基づいて昭和38年(忠和の年金受給が開始された年)以降の忠和及び被相続人の収入を算定すると、別紙忠和及び被相続人の推定収入に記載のとおりとなる。

ところで、被相続人と相手方は、昭和38年に婚姻し申立人夫婦と同居を始めたが、相手方が昭和44年6月ころから昭和47年5月ころまでの間実家へ戻り被相続人と別居していた時期、及び被相続人が昭和52年4月から昭和55年3月まで東京で単身生活をしていた時期を除き、被相続人夫婦は申立人夫婦とずっと一緒に生活をし、昭和57年末ころまでは被相続人が忠和に生活費を渡たし(ただし、その額は不明である。)、忠和が自己の年金なども合わせて家計一切を維持管理していた。しかし、相手方は被相続人の給与がどのくらいであり、生活費がどのくらいであったか全く関知しておらず、かつ、被相続人からも預貯金や株のことについては一切聞いていなかったこと、また、申立人も同様に家計については夫忠和に完全に任せきっており収支状況は全く関心を持っていなかったことから、本件遺産が具体的にいつどのようにして形成されたかは全く不明といわざるを得ない。

しかし、○○証券株式会社長野支店の回答書(乙27号証の1)によると、被相続人は、昭和60年中において、○○製鋼の株式2万株、○○化学の株式2万株、○○建設の株式合計2万株、○○○銀行の株式2,000株を合計14,189,000円で購入しており(このうち○○製鋼の全株式は同年中に400万円で売却されているが。)、他方、○○○銀行の総合口座通帳(甲第10号証の3)によると、同年中の被相続人の給与支給総額(冬のボーナスを含む)は4,691,155円であり、夏のボーナスを含めたとしても、こうした株式購入資金として、給与以外に預貯金などかなりの財産を有していたことが推認できる(乙40号証によると、被相続人は、昭和53年12月時点で預貯金だけでも542万円を有していた。)が、そうした財産は主として被相続人がその給与を元手に、貯蓄したりあるいは株式を次々に売買するなどし、その結果蓄えられてきたものと認められる。しかし、忠和にあっても被相続人の年収のおよそ45パーセントの年金収入があったこと、忠和が死亡した際同人の遺産は400万円ほどしかなかったこと、被相続人は、子供がいなかったことから養子を迎えることを考え、貯蓄など資産形成に対してかなり積極的で、乙第41号証(被相続人の給与明細書)によると、昭和56年ないし昭和59年の12月分の給与から30万円前後(支給額の8割前後に相当する額である。)の預金を行っていることが認められる。

以上の事実によると、申立人夫婦は、その収入のほとんどを被相続人らとの生活費に費やしており、こうした援助が20年以上にわたりあったればこそ、本件遺産が形成されるに至ったとの側面も否定できず、申立人自身、被相続人の遺産形成に際して特別の寄与があったものと認めるのが相当であり、寄与分は、諸般の事情を総合して考慮すると、相続開始時における遺産の5パーセント弱、金額にして800万円と認めるのが相当である。

なお、相手方は、被相続人は忠和に対し多大に寄与分を有するので、本件においてその額を定めることが必要である旨主張するが、主張自体失当といわざるを得ない。また、相手方は被相続人の療養看護に努めたり、共働きをして家計を助けるなどしており、本件遺産の形成維持に特別の寄与があった旨主張するが、療養看護の点については配偶者として通常の行為以上になされたものとは認められず、また共働きをして寄与したとの点についても、格別遺産の形成維持に寄与したとまでは認めることはできず、いずれにしても相手方の寄与分の申立は理由がない。

4  特別受益

申立人は、別紙特別受益目録記載の保険金などは、いずれも実質的には遺贈あるいは死因贈与に準ずべきもので、特別受益に該当する旨主張しているところ、本件記録によると、これらの受取人はいずれも相手方と定められていることが認められ、したがって、上記保険金などは相手方の固有の権利と解するのが相当で、本件遺産には属さないものといえる。しかし、保険金請求権などは被相続人の死亡によって具体的な権利として発生するものであること、被相続人はその生存中保険掛金など何らかの出捐をしていること、退職金は賃金の後払い的性質をも有しているものであることから、相続人間の実質的な衡平を図るという特別受益制度の趣旨も考慮すると、これらは特別受益に該当すると解するのが相当である。

なお、相手方は、申立人は○○生命保険相互会社から保険金5,888,370円を受け取っているが、その受取人が忠和であることから、結果として相手方にも3分の1の相続権があると主張するので検討するが、本件記録によると、保険金の受取人が忠和であること、忠和は被相続人よりも以前に死亡したが、被相続人は受取人を新たに指定することはしなかったことが認められる。そして、この場合には、保険契約者が死亡した当時生存している保険金受取人の相続人が、新たに保険金受取人になると解するのが相当で、したがって、上記保険金は遺産とはならない。ただし、前述したように特別受益に該当すると解され、この分については申立人の相続分から控除することが必要である。

また、前記のとおり特別受益目録3記載の未収金も特別受益に該当するものと解するのが相当である。

5  当事者の意見など

申立人は、遺産目録1(3)記載の建物に、昭和32年以来忠和の姉みつらと一緒に居住し、一貫して同所を生活の本拠地としているのであるから、上記不動産を取得したいとの希望及び同2記載の有価証券を可能な限り現物分割で取得したいとの希望を有している。

6  遺産の評価額

本件遺産分割の対象となる別紙遺産目録記載の各財産の相続開始時及び分割時における各価額は、同目録の「相続開始時の価額」欄及び「審判時の価額」欄(なお、不動産については鑑定時の価額、株式については平成4年9月30日現在における終値、社債及び投資信託については同年2月14日現在の残高である。)記載のとおりである。

7  具体的相続分の算定

みなし相続財産は、

102,923,776円(相続開始時の遺産の総額)+66,195,844円(特別受益)-8,000,000(寄与分) = 161,119,620となる。

具体的相続分は、

申立人:161,119,620円/3+8,000,000円-5,888,370円 = 55,818,170円

相手方:161,119,620円×2/3-60,307,474円 = 47,105,606円となり、その割合は、申立人が54.232パーセント、相手方が45.767パーセントである。

分割時の遺産の価額は141,633,452円であるから、具体的取得分は、

申立人:141,633,452×0.54232 = 76,810,653円

相手方:141,633,452×0.45767 = 64,822,044円

となる。

8  当裁判所の定める分割方法

当事者の意向及び本件における一切の事情を総合して考慮すると、本件は現物分割によるべきであり、次のように分割するのが相当である。

(1)  別紙遺産目録1(1)ないし(4)及び同目録9記載の庭園部分は一体のものとして、申立人に取得させる。

また、同目録5記載の貸付金については、借主が申立人の次女の夫であることから、申立人に取得させる。

次に、同目録2(1)<2>記載の○○電気工業の株式の内16,000株と、同目録2(3)<2>ないし<4>及び<8>記載のボンドプラス88-2などの700口を申立人に取得させる。

以上によると、申立人が取得する遺産の総額は76,753,678円となり、申立人の具体的相続分に対する割合は、99.925パーセントである。

(2)  相手方には、次の財産を取得させる。

<1>  同目録2(1)<1>記載の○○○△の株式3,000株、<2>記載の○○電気工業の株式の内14,000株、<3>記載の○○○○の株式2,205株、<4>記載の○○○の株式922株、<5>記載の○○電力の株式30株、<6>記載の○○△の株式1株及び<7>記載の○○電気工業(持株会)の株式643.25株

<2>  同目録2(2)記載の○○銀行転換社債第2回

<3>  同目録2(3)<5>及び<6>記載のボンドミックス88など300口及び<11>記載の中期国債ファンド2,365,804円

<4>  同目録4記載の現金20万円、同目録6記載の電話加入権(××-××××)、同目録7記載の車両(○○○○○○○58年型)及び同目録8記載の家財一式

<5>  同目録10記載の代償請求権合計12,090,557円(これを申立人に取得させると、後に履行の問題を残すこととなり相当でないので、その全額を相手方に取得させるのが最も相当である。)

以上、相手方が取得する遺産の総額は64,879,774円となり、相手方の具体的相続分に対する割合は100.089パーセントとなる。

9  手続費用

本件手続費用は、それぞれ支出した当事者に負担させるのが相当である。

よって、主文のとおり審判する。

(家事審判官 松嶋敏明)

別紙遺産目録、特別受益目録<省略>

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